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進撃の巨人

「ヒィズル国」考察と再会したエレンとライナー『進撃の巨人』98話「よかったな」後半

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第98話の前半ではエレンの祖父が出てくるところまで考察しました。

第98話の感想と考察はこちらをごらんください。

『進撃の巨人』98話、ガビに競走で勝つファルコの画像
ファルコとガビの恋愛進展? エレンの祖父登場『進撃の巨人』98話「よかったな」前半

諫山創『進撃の巨人』ももう第98話目。今まではずっとライナー達マーレ国側の話でしたが、ついにエレンたちの話もでてくるようになります。以下98話のネタバレありの感想と考察なので未読の方はご注意ください。 ...

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物語の舞台はマーレ国とタイバー家主催の晩餐会へ移ります。以下、ネタバレ有りの感想と考察なので未読の方はご注意ください。

謎の「ヒィズル国」の人物登場

晩餐会で給仕する戦士候補生のファルコ、ガビ、ウド、ゾフィアたちですが、外国の大使など要人に差別的な言葉を投げかけられます。「穢れた血が料理を運んでいる」とか、子供にまで酷い言葉を投げかける外国人、巨人になれることから悪魔の末裔と言われているエルディア人に対する差別の根深さを感じます。

妙齢の和服の女性

外国の収容区にいて、酷い差別を受けていたウドは当時を思い出したのか動揺して体勢を崩し、女性の着物ににワインをかけてしまいます。

差別されているエルディア人がこんな粗相したとなると、ウドは周りの大人にボコボコにされてしまうんじゃと思ったら、なんとこの和服の女性はウドをかばってくれます。

エルディア人のウドをかばうヒィズル国の着物女性の画像

しかも他の外国人とは違って、エルディア人を差別してない様子です。

この女性は東洋から来た「ヒィズル国」の人とのこと。

「ヒィズル国」は日本がモデル

女性の着物と髪型から日本っぽさが醸し出されていましたが、「ヒィズル国」というところで日本を元ネタとした国ということが確定しました。

なぜなら「ヒィズル国」とは、かの小野妹子が遣隋使として隋帝国に訪れた際に渡したとされる国書の中にある

「日出處天子致書日沒處天子無恙云云」(日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙無しや、云々)

に通ずるからです。「日出ずる処」の「ひいずる」を元ネタとして「ヒィズル」としたんですね。

『進撃の巨人』では東洋人はほぼ絶滅したのでは?

『進撃の巨人』作中では主人公エレンの幼馴染であるミカサは既に絶滅したとされる「東洋人」の末裔とされていました。確かに壁の中には東洋人キャラは出てきませんし、マーレ国の中にも東洋系の人は見られません。

しかし、「ヒィズル国」という明らかな東洋の国があるというのはどういうことでしょうか。絶滅したというのはあくまでも「壁の中」だけの話であり、「壁の外」では東洋人は普通にたくさんいて、国も作っているということなんでしょうか。

第98話の時点ではまだ分かりませんが、その可能性は高いです。

ということは、「ヒィズル国」だけではなく「日没する処」を表す「中国」も『進撃の巨人』世界にも現実社会と同様に存在するのかもしれません。

この晩餐会では、今まで主だった人物だった西洋系の人だけでなく、「ヒィズル国」とともに黒人系の人たちの姿が見られます。エレンたちが暮らしていた「壁の中」以外の世界は、現実の世界とほぼ相似形なのかもしれません。

「ヒィズル国」の着物の背中にある紋章の謎もこれから明かされていくでしょうが、いろいろ楽しみです。

東洋から来たヒィズル国の着物にある紋章の画像

なぜ「ヒィズル国」の女性はエルディア人・ウドをかばったのか

しかしなぜ「ヒィズル国」の女性は多くの国で忌み嫌われているエルディア人のウドをかばったのでしょうか。

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現実世界の日本はナチス・ドイツと同盟を組んでいた第二次世界大戦時でも迫害されたユダヤ人を助けていました。西洋と価値観を共有していなかった日本はユダヤ人を悪とは見なさず、日露戦争ではユダヤ資本から融資を受けて戦費を調達していました。

『進撃の巨人』作中世界でも「ヒィズル国」は他国のエルディア人差別に加担せず、じつは裏でエルディアとつながっているのかもしれません。

今後、「ヒィズル国」は重要な役割を演じそうですし、東洋人の末裔・ミカサがどのようにかかわっていくのかも気になるところです。

マーレ外交大使とヴィリーの演説

晩餐会ではマーレ国の外交大使が演説をしますが、全然盛り上がりません。

タイバー家当主ヴィリーは共通語が聞き取れなかったようだとフォローしていますが、各国の大使級の要人が共通語を理解できないはずがありません。

これは最近まで戦争をしてた「中東連合」以外も、巨人の力を利用して軍事拡張を続けるマーレ国をこころよく思っていないということでしょう。

タイバー家当主・ヴィリーは「救世の末裔」

タイバー家当主・ヴィリーが演壇に立つと、聴衆は打って変わって盛り上がり、ヴィリーを「救世の末裔」と讃えます

なぜタイバー家が「救世の末裔」といわれるかというと

  1. フリッツ家に反旗をひるがした
  2. フリッツ家をパラディ島の壁の中に撤退させた
  3. タイバー家が有する「戦鎚の巨人」を他国に対して一度も使ったことがない

などの理由でしょう。

タイバー家当主・ヴィリーの演説内容

ヴィリーは巨人化できるエルディア人に最も虐げられたマーレ人がエルディア人を利用して他国に圧力をかけている現状を他国が快く思っていないだろうことを代弁し、世界中が巨人さえいなければと思っているだろうと言います。

そして、そんな膠着した終わりのない問題に対して「一つの解答」を与えると宣言します。

その「解答」はマーレの「レベリオ収容区」で発表すると言います。

ヴィリーは自分を「偉大なる劇作家」と称し、聴衆を「歴史の目撃者」と言い、会場のボルテージはうなぎのぼりです。

タイバー家当主・ヴィリーは何をするのか

ヴィリーが今後、レベリオ収容区の祭りで何をしようとしているのか分かりません。ネットの考察ではタイバー家はすでに「戦鎚の巨人」を持っていないのではないかという意見もありますし、それを匂わせる描写もあります。

「戦鎚の巨人」を他国に対して一度も使ったことがないといのも、そもそももう持っていなくて、使おうにも使えなかったのではないかと。

しかし、タイバー家はエルディア人達を三重の巨大な壁に閉じ込めて、人々の記憶を改竄するほどの力を持った第145代目フリッツ王(初代レイス王)と渡り合ったほどの実力を持っています。

もしかしたらタイバー家の人も人々の記憶を操る能力を持っているのかもしれません。そうなると、お祭りに集まった各国の要人をまとめて洗脳するということも考えられます。

記憶を操る力がエルディア人にしか通用しない可能性もあります。わざわざ祭事をエルディア人が住むレベリオ収容区で行うということは、それも考慮しているのかもしれません。そうなると各国の要人は操られたエルディア人たちによって人質になってしまうのかもしれません。

レベリオ収容区のお祭り始まる

ガビが起きると、すでにレベリオ収容区ではお祭りが始まっていました。

戦士候補生のガビ、ファルコ、ゾフィア、ガビたちとライナーは心ゆくまで食べまくり、つかの間の安らぎを得たように見えます。

ガビの食べる様子は芋女ことサシャ・ブラウスを彷彿とさせます。

この子供たちとそれを見守るライナーを見ていると、マーレ国側のキャラたちにも親近感を抱いてしまい、今後待ち受けるであろう惨憺たる運命により悲壮感を感じます。

マーレのレベリオ収容区で祭りを楽しむファルコ、ガビ、ウド、ゾフィアとライナーの画像

これまで2巻くらいを使ってマーレのことを描いてきた作者の構成のうまさに舌を巻きます。

エレンとライナー、運命の再会

祭りの中、タイバー家当主・ヴィリーが演説を始める少し前に、ファルコはライナーを地下室へ連れて行きます。

そこには、クルーガーを名乗る男がいて「4年ぶりだな」と声をかけます。

4年ぶりに再会するライナーとエレン(クルーガー)の画像

うすうす読者も気付いていたでしょうが、ここでクルーガーは実はエレンだということが確定します。

長髪となり、髭は生えて背は高くなっていますが紛れもなくエレン・イェーガーです。ライナー・ブラウンが老けまくっていたのと比べると、そんなに変わってないです。

クルーガーは戦争でおかしくなり記憶障害で入院しているという設定でしたが、それは仮の姿で本当は戦傷者を装ってマーレに潜入していたのでした。

エレンは足を失う負傷をしていますが、身体のダメージは巨人化するとリセットできるため、潜入のためにわざと切断したのかもしれません。

エレンはまだ「進撃の巨人」になる力を有していると思いますが、お祭りのヴィリーの演説にあわせて暴れまくるつもりなのかもしれません。

しかしマーレ側には

  • 「獣の巨人」ジーク
  • 「鎧の巨人」ライナー
  • 「顎の巨人」ポルコ・ガリアード
  • 「車力の巨人」ピーク

という4体の巨人が揃っています。

さすがにエレンも4対1で正面から戦うことはしないでしょう。

ライナーをわざわざ呼び出したということは、話し合うつもりなのかもしれません。

気になるのは、ライナーがあまり驚いていないことです。普通なら4年ぶりに殺し合った元仲間と出会うはずのない自分の故郷で出会ったら腰を抜かすほどビックリするはずです。

ライナーはエレンが現れることをなんとなく予測していたのでしょうか。

第97話ではライナーの行動からライナーの心が完全に壊れてしまったことが分かりますが、もう驚くこともできないほど心が病んでしまっているのかもしれません。

第98話の最後には

己の平穏を望むなら
同じく平穏を望む者と
戦わなくてはならない

とありますので、今後やはり二人は戦うことになるのでしょう。エレンがファルコと語った話から、人は時代に翻弄されてやむなく望まない戦いに身を投じてしまうことがあるという発言もあり、4年も経ってライナーたちの立場にもあるていどの理解はしていることがうかがえます。

しかし、事態がここまで進展してしまい、個人だけではなく国家の論理に巻き込まれたエレンとライナーは戦わざるをえないのでしょう。

新たな展開はここから始まる ライナー表紙の諫山創『進撃の巨人 23巻』

現在の最新刊は第91話から第94話収録の『進撃の巨人 23巻』です。加齢よりも苦悩ゆえにかなり老けてしまった貫禄のあるライナーが表紙です。

今までの進撃の巨人の舞台だった壁の中=パラディ島の外がどうなっていたのかが明かされる重要な巻です。

進撃の巨人(23) (週刊少年マガジンコミックス)

23巻収録のそれぞれの話のサブタイトルは

  • 第91話 「海の向こう」
  • 第92話 「マーレの戦士」
  • 第93話 「闇夜の列車」
  • 第94話 「壁の中の少年」

です。

23巻はエレンやアルミン、ミカサ、リヴァイ兵長など、パラディ島側のことはほぼ描かれず、ライナーやアニ、ベルトルトが属しているマーレ国のことだけが語られています。

ネットではエレンたちが出ないことで叩かれていることもあるようですが、今まで敵で悪役と思われていたマーレ国の人々の事情や苦悩を描くことによって、物語が重層的になり、さらに盛り上がっていきます。作者の構想の深さに脱帽です。







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